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側弯症の装具治療、継続の秘訣とは?|心理的要因と装具装着時間の関係を解説

【思春期特発性側弯症の装具治療

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成功のカギは「心理的満足度」だった!】

思春期特発性側弯症(AIS)の治療には、装具(ブレース)が欠かせません。手術を避けるためにも、1日18時間以上の装着が推奨されています。しかし、多くの患者が装具の使用を継続できず、治療がうまくいかないこともあります。

最新の研究では、「装具治療の成功には、患者の心理的要因が大きく関係している」ことが明らかになりました。特に、治療開始前の「心理的満足度」が、その後の装具使用時間に影響を及ぼすことが分かっています。本記事では、装具治療の継続に影響を与える要因と、成功率を高めるためのポイントを解説します。


【装具治療の成功率は心理的要因に左右される】

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これまで、側弯症の進行リスクは「年齢」「骨の成長段階(リッサー分類」「コブ角(背骨の湾曲度合い)」などの身体的要素で評価されていました。しかし、最新の研究によると、装具の装着時間には「心理的な満足度」も重要な役割を果たしていることが判明しました。

装具を1日18時間以上装着できた患者と、そうでなかった患者を比較すると、治療開始前の「満足度」が高いグループの方が、装具をしっかりと着ける傾向がありました。具体的には、

  • 治療開始前に「治療に満足している」と感じていた患者は、6か月後も装具をしっかり装着していた
  • 逆に、治療開始前に「満足度が低い」と感じていた患者は、装具の装着時間が短くなる傾向があった

つまり、装具治療の成功は「患者の心理状態」にも左右されるということです。


【装具の装着を継続するためのポイント】

では、装具治療を成功させるために、どのような工夫ができるのでしょうか?研究結果をもとに、具体的な対策を紹介します。

1. 治療前にしっかりと情報を得る

患者自身が治療について正しく理解し、納得できることが重要です。装具治療の目的や効果、期待できる結果について医師としっかり話し合いましょう。また、信頼できる医療機関のウェブサイトや、側弯症の専門団体が提供する情報を活用することも大切です。

2. 装具使用の「最初の1か月」がカギ

研究によると、装具治療の最初の1か月間にどれだけ装着できたかが、その後の装着時間に大きく影響することが分かっています。そのため、

  • 最初の1か月は特に意識して装具を装着する
  • 可能な限り18時間以上の装着を目指す
  • 家族や友人の協力を得て、サポートしてもらう などの工夫をすると、長期間の継続がしやすくなります。

3. 装具治療に対する前向きな気持ちを持つ

装具をつけることにストレスを感じる患者も多いですが、できるだけ前向きにとらえることが大切です。装具を着けることで手術を回避できる可能性が高まるため、「自分の体を守るために必要なもの」と考えると、装着のモチベーションが上がるかもしれません。

また、研究では「ストレスの有無と装具装着時間には直接的な関係がなかった」ことが示されています。つまり、ストレスを感じていても、それが装具をつけられない直接の原因とはならない場合があるため、ストレスとうまく付き合いながら治療を進めることが重要です。


【まとめ|装具治療成功のカギは心理的要因!】

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思春期特発性側弯症の装具治療では、「骨の成長状態」や「コブ角」だけでなく、「心理的な満足度」も治療の成功に影響を与えます。

成功率を高めるためには、

  • 治療前にしっかりと情報を得て納得する
  • 最初の1か月間の装着を特に意識する
  • 装具治療を前向きにとらえ、モチベーションを保つ といった工夫が大切です。

装具治療を続けるのは簡単なことではありませんが、正しい知識と前向きな気持ちを持つことで、より効果的に治療を進めることができます。

参考文献 Asada T, Kotani T, Sakuma T, et al. Factors Influencing Optimal Bracing Compliance in Adolescent Idiopathic Scoliosis: A Single-center Prospective Cohort Study. Spine 2024;49:1708-1715.

 

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